四川省テレコム:4Kでブロードバンドをリードする

四川省テレコム:4Kでブロードバンドをリードする

Chen Yuhong

チャイナテレコム四川(四川省テレコム)はほんの数年前まで、消費者の好みが細分化する一方、差別化がされていない市場で収益を伸ばせずにいました。しかし同社は、先例のないファイバーネットワークの展開により4KウルトラHDコンテンツの提供を開始し、中国における従来の型を破りました。これにともない、加入者数および収益も伸びています。同社のジェネラルマネージャーの趙麦慶(ジャオ・マイチン)氏と、ジェネラルマネージャー代理の周清久(ジョウ・チンジウ)氏が語ります。

「012」戦略

2013年に四川省テレコムは、「0」無料の4KウルトラHDビデオ視聴、各家庭に「1」本のFTTH、「2」台の携帯電話という、「012」変革戦略を打ち出しました。趙麦慶氏は次のように述べています。「0市場への参入は比較的容易だと考えています。戦略1および2は、四川省テレコムのIPTV、光ブロードバンドサービス、2台のスマートフォンが利用できる169人民元(約2,761円)のサービスパッケージによって実現します」

趙氏はまた、中国のスマートフォン市場の飽和状態についても語っています。通信事業者にとってこの分野での拡大は困難であり、チャイナテレコム(China Telecom)はブロードバンドとのバンドルという手段で対処しています。趙氏は次のように述べています。「通信事業者は、解約率を減らすと同時に新たな加入者を開拓しなければなりません。IPTVと光ブロードバンドは、スマートフォン市場における通信事業者のビジネスの発展を大幅に促進する可能性があります。私たちの調査によると、テレビはリビングルームに必須の端末で、お客様の確実な需要があることがわかりました。ブロードバンドと携帯電話のパッケージにIPTVサービスを加えることができれば、販売促進はずっと容易になるでしょう。いずれにしろ、新たな需要を創出できなければ、私たちは既存の市場の需要に甘んじなければなりません。そのため、四川省テレコムは差別化戦略を検討する中で、IPTVを選択しました。現在、各通信事業者は、ほぼ同じ帯域幅のパッケージを提供しています。しかし四川省テレコムには、IPTVという強みがあるのです」

趙氏はまた、次のように述べています。「ビデオは通信事業者にとって基本的なサービスですが、イノベーションのみを追求して、通信インフラの整備を疎かにすることはできません。まず、ネットワークの性能を強化する必要があります。光ブロードバンドをベースとしたIPTVサービスは、革新的な通信インフラサービスでもあるのです。通信インフラのみのサービスと比較して、IPTVは映画、テレビ番組シリーズ、その他さまざまな新サービスの提供により、消費者とより密接な関係を築くことができます。したがって、1千万人のIPTV加入者には、同数の固定ブロードバンドや電話加入者よりも高い価値があると言えます。ビデオサービスは通信事業者にとって、ビジネス発展の促進、収益の拡大、将来の変化への対応に有益であることは明らかです。」

ビデオが基本サービスになった今、四川省テレコムは、ネットワークの立案、構築、運用、保守において包括的な変革を成し遂げました。オンラインの4KウルトラHD映画には、最低50Mbpsの帯域が必要です。マルチスクリーンやマルチルームでこのような通信容量に対応するには、高速かつ大容量なブロードバンドネットワークが必要になります。

銅線から光ファイバーへ

2014年に四川省テレコムは、5,279の村に光ブロードバンドを敷設しました。これにより、「四川省モデル」が中国政府による「ブロードバンドチャイナ」の取り組みの一環となったことは確かです。四川省テレコムのジェネラルマネージャー代理である周清久氏は次のように述べています。「予定では2015年末までに、四川省テレコムは省全域の光ネットワークカバー率100%を実現します。光ファイバーの利用者は、全加入者数の90%以上を占めるようになるでしょう。一部の従来型スイッチは、徐々にリプレースされていきます。ネットワークの帯域幅が拡大し、アプリケーションタイプが変化するにつれ、四川省テレコムのネットワークは、アクセス集約型ネットワークからコンテンツ伝送ネットワークへと変革が進められています。私たちは、基本のアクセスネットワークの強化に加えて、CDNの構築、ビデオコンテンツ伝送のためのサーバークラスタリング、再生サブシステムとユーザー配信との関係、再生サポートやVAS(Value-Added Service:付加価値サービス)開発など、ビデオコンテンツの配信について包括的に計画しなければなりません」

4Kを実現するために

周氏はさらに次のように述べています。「私たちは4Kビデオビジネスのために、ファーウェイの協力によるアクセスネットワーク構築、サービス提供プラットフォームの機能設計、4K端末やサービスの開発などを含め、さまざまな準備を行いました。ビデオビジネスには、顧客体験や販売場所の点で従来のビジネスとは全く異なる販売チャネルが必要であるため、私たちは多くのテレビベンダーと協力して、4Kテレビを販売している店(中国では低コストのメーカーの活況により、このような店が多数ある)に4Kビデオ体験ゾーンを設置しました。また、4Kコンテンツの収集に絶えず取り組みました。4Kにかかわる産業チェーンは未成熟ですが、急速に成長しています。サービスサポートや保証システムも、FTTH、4K端末の設置および不具合の修正、サービスデリバリーを通じた4K体験の紹介やデモンストレーションなどを含むビデオビジネスの発展に対応させる必要があります。言い換えれば、4Kビジネスのプロモーションは広範なのです」

趙氏はさらに次のように続けています。「2012年末時点の四川省テレコムのIPTV加入者数は70万人、光ブロードバンドユーザー数は100万人に過ぎませんでした。しかし、この7月末時点でのIPTV加入者数は600万人、光ブロードバンドユーザー数は700万人を超えています。この2年半でユーザー数は大幅に増加し、携帯電話加入者の解約率は減少しました。スマートフォンユーザーの割合が増加し、1人当たりの平均通信量も増加しています。チャイナテレコムの統計によると、四川省テレコムは2015年1~5月のIPTV数、ブロードバンド、スマートフォンユーザーの純増で1位を記録しています。また、私たちは主要ビジネスの収益で最大の成長率を達成しました。」

これに加えて、四川省テレコムのテレビ付加価値サービス関連の収益は、2013年と比較して2014年には3倍に拡大しました。同年のウルトラHDサービス加入者数は70万人と推計されています。 

産業チェーンの協業による市場の拡大

4Kビデオ業界では、コンテンツ不足が大きな問題となります。四川省テレコムは、2015年後半から業界パートナーと協力し、産業チェーン全体の発展推進に共同で取り組むことで、この問題を解決する予定です。 

四川省テレコムは4Kサービスの提供を開始した日に、ファーウェイ、四川ラジオテレビ集団、成都ラジオテレビ集団、BesTV、Union Voole、四川長虹電器(Changhong)、ハイセンスソニー(Hisense Sony)、サムソン(Samsung)と共同設立するウルトラHD 4Kの業界アライアンスの設立を発表しました。同アライアンスはさまざまなビジネスモデルや産業チェーンの協業モデルを定義し、各産業の参加企業は4Kに対して有益なリソースを積極的に投資します。

四川省テレコムは、4K産業チェーンにおいて3種類のタイプのパートナーを有しています。第1のタイプは、ファーウェイのようなICTソリューションプロバイダーを含むネットワークおよびプラットフォームビルダー、プラットフォームプロバイダー、ならびにソフトウェアおよびハードウェアサービスインテグレーターです。第2のタイプは、コンテンツプロバイダーです。4Kビジネスを発展させるために、四川省テレコムはオリジナルのiTVに加えて、より豊富なプレミアム4Kコンテンツを必要としています。第3のタイプは、スマートデバイスのメーカーです。たとえば、市販されている50インチ超のテレビの過半数は4Kに対応しています。4K端末の人気は高まる一方です。

技術とコンテンツが揃ったら、適切なビジネスモデルが4Kの普及に重要になります。現在の四川省テレコムの4Kコンテンツのほとんどは、映画やテレビシリーズです。同社は今後、教育やヘルスケアをラインナップに加え、幅広いコンテンツを提供する予定です。四川省テレコムはさらに、4Kの機能およびサービスをテレビの他にスマートフォン、タブレット、ウェアラブルなどの端末でも提供する予定です。加入者数が増えれば、後方への課金(backwards-charging)などのより柔軟な相互作用モデルやビジネスモデルを考案することができます。

四川省テレコムはこの7月から、4K STBの販売を開始しました。4K STBのユーザー数は、2015年末までに200万を超えると見込まれています。趙氏は4K番組の導入に関して、通信事業者が産業チェーン上流の企業と利益をシェアする必要があると考えています。市場が未成熟な段階では、4Kコンテンツを比較的低価格もしくは無料で提供することで、ユーザーを獲得する必要があります。また、4K STBの販売を通信事業者が支援することも考えられます。四川省テレコムは、すべての業界パートナーと協力して4Kの導入を積極的に推進し、ウルトラHDビデオコンテンツより多くのユーザーに普及することを期待しています。 

周氏は、4Kサービスが家庭市場で十分に確立すれば、法人市場でも需要が高まると主張しています。たとえば、数年前に一部のホテルやレストランが小規模の独立VOD(Video-On-Demand)システムを採用しましたが、システム効率は高くありません。このビデオサービスについて、通信事業者が標準化やカスタマイズを行うことができれば、これらの店舗は進んでシステムをアップグレードするだろうと周氏は考えています。これはまた、大きく成長しうる法人市場に通信事業者が参入するための重要な一歩になると周氏は確信しています。